英紙フィナンシャル・タイムズ：中国は「世界の工場」に別れを告げる

過去10年のほとんどの間、中国は原材料を輸入し、安価な製造品を世界各地に輸出する紛れもない「世界の工場」だった。しかし、賃金上昇に伴いメーカーコストが押し上げられ、中国は製造業の輸出拠点としての最大の優位性を失いつつあることを示す兆候が増えている。

ビジネスコンサルティング会社AlixPartnersが発表した初歩的な研究結果によると、昨年の世界経済危機の際、中国は世界最低コストの部品製造国としてインドとメキシコに追い越された。

これまでの日本やアジアの四小龍のように、民衆が豊かになるにつれて、中国はバリューチェーンのハイエンド運動に挑戦している。しかし、近い将来、賃金上昇の速度が多くの企業の技術アップグレードの速度を上回る可能性があることが明らかになった。

中国政府は中国の所得格差を解決する方法を検討しており、この問題を「第12次5カ年計画」の優先事項としている。中国は来年、「第12次5カ年計画」を発表する予定だ。公式データによると、昨年の中国の都市部と農村部の収入格差は1978年の現代記録以来最大の水準に達し、この問題は緊迫してきた。

一方、中華全国総工会の高官は先月、中国の国内総生産（GDP）に占める労働報酬の割合が22年連続で低下していると警告した。報酬の低さ、労働条件の悪さ、労働時間の長さはますます多くの紛争と労働者の騒乱を引き起こしており、この役人は「中国社会の安定に厳しい挑戦をしている」と述べた。

中国共産党は、所得格差の拡大は長期的な政治生存問題にかかわるとみている。政府は今年に入ってからこれまで、主要製造業センターのほとんどの最低賃金基準を引き上げる措置を取ってきた。

広東省は3月、最低賃金基準の20%引き上げを発表した。中国の輸出品の約3分の1は広東で生産されている。

第1四半期には、江蘇省、浙江省、上海を含む他の7つの省・市も、最低賃金基準を10%から17%に引き上げた。中国人的資源・社会保障省によると、今年は最低賃金基準を引き上げる20省がある。

賃金引き上げは、国民の不満を静めるためだけでなく、世界最大の製造業機器に十分な労働力を確保するためでもある。

中国の沿海都市工場の労働者の多くは、貧しい内陸部と西部省から来た出稼ぎ労働者だが、近年、現地の低い労働力と税負担コストを利用するために、ますます多くのメーカーが業務を大陸部に移転している。

同時に、農村の福祉改善、農産物価格の上昇、農村の税賦の軽減も、広東省やその他の沿海地域へのアルバイトの魅力を低下させた。

公式報告書によると、今年2月の中国の春節休暇が明けたばかりで、広東省の製造業の中核地帯では200万人以上の出稼ぎ労働者の雇用機会が提供された。

中国が出稼ぎ労働者を誘致するために賃金を引き上げ、労働条件を改善する措置は、より遠い地域の労働者を誘致している：ますます多くのベトナム人労働者が中国南方の工場に不法に潜入してアルバイトをしている――収入は往々にして彼らの国内で稼いだ2倍である。

しかし、中国の労働力コストは日増しに上昇しているにもかかわらず、アジア全域で賃金引き上げの圧力を感じている--これには日本が含まれていない可能性があり、長期的にはデフレ圧力に対抗するために努力してきた。

ベトナム政府は最近、公務員や国有企業の従業員の最低賃金基準を引き上げた。同国がインフレ圧力に対抗するため、1年で2回目の賃上げとなる。

カンボジアでは、製衣業は製衣労働者の生活に必要な最低賃金基準を2倍近く引き上げなければならないという圧力に直面している。製衣業は同国の主要輸出産業である。

香港、ブルネイ、マレーシアなどはより裕福だが、貧富の差が大きく、最低賃金基準は制定されていない。これらの国と地域も最低賃金法を制定するように見え、シンガポールとマカオは東アジア地域がこのような法規の制定に反対する「孤島」になるだろう。

東アジア全域で賃金水準が上昇しており、中国は波瀾万丈だ。各国政府はこの傾向が拡大する貧富の格差を軽減することを望んでいるが、グローバル経済における自国の競争力を弱めることも懸念されている。

しかし、ローエンド製造業は自国やアジア地域の労働力コストの低い地域に徐々に移転する可能性があるが、すでに構築されているインフラは、前世紀6、70年代の日本と90年代のアジアの四小龍のように、企業がバリューチェーンのハイエンドに向かうのを助けるだろう。翻訳者/ホリー